I like your outfit, thank you.

両親が英語が苦手で苦労したから、3歳の時から英会話に断続的に通っていた。

うちは転勤族だったから、住む場所が変わるたび、習い事できる場所も探した。

小学5年生の時は、ピアノ書道英会話水泳塾といった具合で相当忙しい小学生だったと思う。これも母が専業主婦で車を出してくれるから成立したことだろう。

 

その小学五年生の時。その時は特に転勤というわけでもないんだけど新しい英会話教室に行き始めた。週二回でとにかく英語で始めから終わりまで一時間話し続けるというもの。先生は日本人だけど高校からアメリカ、某企業の通訳なんかも経ていて完全に西海岸の英語を話す。その先生がカリスマ的に行なっているという感じ。How're you doing?から始まり、先生への質問タイムが毎週あり、ちょっとしたスピーチみたいなことをしたり、あとはハロウインなどのイベントに合わせて衣装を作ったり。などなど。最後におやつをくれる。

 

英語を話すことへの抵抗を日本で暮らしている中でかなり下げてくれたこと、などそこに結局高校卒業まで通ったことにより良かったことはたくさんあったと思う。その中でも一番良かったのは他人を口に出して褒めることを知ったことだと思う。

 

ある日レッスンに行くと、先生に「I like your outfit!」と言われた。びっくりした。特に新しい服でもなんでもなかったのに服を褒められるという経験は初めてだった。何気なくレッスン開始時にみんないるところで。身内以外のそういった人に自分の成果だけじゃなくてそういう些細な点についてはっきりと褒められた経験が初めてだったと思う。

 

女子はよく互いを「かわいい〜!」と褒めそやすことでプラスやマイナスの評価を受けることが多いが、小学生の私はその概念に疑問を持っていた。だってそんなこと起こったことなかったのだ。思い返すと小学校ではなく中学くらいから始まる”ムーブメント”なのではと思うが。というか高校まで起こったことあったか?かわいいね、それ。くらいの温度感なのではないだろうか。

 

それいいね、かわいいね、ということが人の些細な幸せ、その日いいことがあったと思えるくらいの毎日のプラスになることがわかった。もちろんそう思わなかったらわざわざ言う気にもならないので思った時だけ。それから周囲の人に「それかわいいね」「今日の服いいね」と言うようになった。日本人、そこまで言う人が多くないような気がするのだ。特に私の周りは。「盛れてるね」を褒め言葉として自然に使う人たちは自然に言い合っているのかもしれないな。

 

褒められて育たなかったことでどこか歪んでしまった、承認を感じなかった、と言う人が周囲に沢山いる。私はあんまりクリティカルな指摘も得意じゃないし。だから相手が照れるくらいには褒めていこうと思うのだ。たとえそれが纏っている表面的なものでも。小さなことからね。

 

海外の街を歩いていると。英語圏しかわからないが。着ている服が面白かったりイヤリングが個性的だったりすると「それいいわね!」と知らない人に話しかけられたりする。それも積極的に口に出すこと、コミュニケーションの発話量に関係しているのかな。

 

前ロンドンの地下鉄に乗る時階段を降りていると、パーティードレス?ジャンプスーツ?を着ながら階段をダッシュで上っている女の人がいた。かっこいいドレスだ。思わず振り返ると、私より下にいた人が、大声で「I LIKE YOUR OUTFIT!」と叫んで「THANK YOU!!」と返していた。