芸術を学ぼうと思ったのは一人になってからだった

芸術を学ぼうと思ったのは一人になってからだった。

 

当初専攻しようと思っていた言語学のつまらなさに気づき、進路を考えあぐねて一年。学生団体に時間を費やした一年。が過ぎて二年。団体は引退して、授業も少ない。自動車学校に通う以外特に何もせず、日々自己嫌悪に時間を溶かしていた。

上京したての頃は、観光客マインドでいろんな美術館に足を運んでいた。東京には美術館がたくさんあるから。そうそうしているうちに美術館に行くのが趣味ですってくらいの頻度で行くようになった。月2くらい。だんだん観光客から住民になれたから頻度は減ったけど。

 

六本木クロッシング2016を訪れたのは6月だったか。現代アートは思考の余地を与えてくれるのがで好きだ、だなんて一時期思考がコンプレックスにだった人間が言うか?と言う感じだけど、引っ掛かりがわかりやすく存在する作品が多くて楽しい。純粋に誰もが見て美しいと思うルネサンスの絵画は、誰が見ても美しくて、そこに自分の介入する余地が残されていないように思う。美しさが作品の価値ではないと言う時代から美術史は面白くなると思う。*1

特に日本の若手アーティストだけを集めているこの展覧会は、一般人にもこの人いいなーと発掘する(それに出ているだけですでに有名なんだけど)機会を与えているようで、新たな出会いがあるような気がして、良いと思う。

 

四時間くらいかけて巡った森美術館で、今でも一番好きだと思う作品がある。写真のような正確さで描かれた油彩には、ほんの少しの傷がある。都市に住まう女性にインタビューして得られた、彼女たちの「生活の傷」を描いた作品には、詩のような思わせぶりな題名がつけられている。

それを見た時の感情は、共感だろうか。私(たち)のための芸術であると思った。非言語だから、言葉でうまく考えられないコンプレックスをたやすく超えてくる。あー、嬉しかったなあ。じんわり泣きそうだった。うまく説明できないのだけどとりあえずで言葉にすると都市に住む女性の孤独をうまく書きだしていて、それが響いたと言うことになる。

 

 

この後しばらく芸術へのモチベが一番高まっていたと思う。ガレ展に赴いてガレに出会い、アール・ヌーヴォーを知ったのもこの後くらいだった。(これはカタログまでよかった、サントリー美、カフェもいい)なんだかんだで美術館に通い続け、絵に詳しくも、熱がとてもとてもあるわけではないけど、飽きることはないだろうと思って、そっちの道に進むことにした。私は全体感がなくて、将来設計が苦手で、こういう出会いでしか進むことができない。

 

なんでこんなことを書いたかと言うと奨学金の関係でボランティアをせねばならず一つに断られもう一つをやっと見つけて、応募理由を考え直さないといけないから。最初の施設は留学の志望動機を少し変えたものを出したのだけど、今回の施設はメンタルヘルスのチャリティー財団が運営しているようで、そう言う経験をした人を特に歓迎ということで、じゃあ今まで応募理由に書いてこなかったことを書こうと思って、モチベの前の段落まで整理し直そうと思った。こういう類のものは、書いているうちに、話しているうちに、だんだんコンパクトに話しやすいようになっていく傾向がある。志望理由でも馴れ初めでも。まあだからどうということではないけど。

英語にしなきゃ…。

 

イギリスに来てからも色々なストレス発散方法を試す中で絵を書くというのは自分でもやってみているから、アートセラピーをやっている団体で働けるならそれは合っていると思う。言葉より早く、変換を最小限にして直感的に表現できるのが良いところだと思う。私が本格的に絵をやっていないからだと思うけど。

 

 

奨学金の面接の時、最後の質問で「あなたの留学計画が他の人と比べてユニークな点はなんですか」と聞かれた。そんな対策はしていなかったから、慌てて、ここは学生らしい熱意を見せるのがポイント稼ぎに大事だと思い「芸術が好きだという本心から出ているものなので上っ面でなくて熱意は誰にも負けません」みたいなことをしゃあしゃあと述べた。芸術への熱意なんてそんなにないし、だから日本の文化を盛り上げようなんて一ミリも思ったことないよ。でも志望動機が、アートとのの馴れ初めがある程度本心から語れるエピソードでよかったなとは今思った。

 

*1:かといって、好きな作家は、と聞かれると、特に環境を大事にしてないのにオラファーエリアソンを綺麗だからと言う理由で挙げたりするけど、、、しかもアール・ヌーヴォー好きだし、ガレの作品は美しいし